参院選の2つのリスクシナリオ
<参院選前のメインシナリオ:石破政権継続>
予算等の成立後に政局があるか注目されるが、現時点では、メインシナリオとして石破政権の継続を予想する。最大の理由は、政局を起こす日程的な余裕があまりないためだ。
予算等の成立後も、通常国会において5年に1度となる年金制度改革の関連法案を審議する必要がある。過去の審議日程等を踏まえると、与野党は5月頃まで審議を尽くして改正法成立を目指すのではないか。
6月中に通常国会の会期末を迎えようが、参院選を(参院改選議員の任期満了を)控えているため、会期は延長されない可能性が高い。6月には与野党とも公約取りまとめなど参院選モードに入るだろう。すなわち、石破政権継続のまま、参院選を迎える可能性が高そうだ。
リスクシナリオとしては、春以降に2種類の政局が生じる可能性が考えられる。与党が起こす政局と野党が起こす政局だ。
<参院選前のリスクシナリオ①:与党が起こす政局>
まず、与党が起こす政局について。内閣支持率の低下が続くようであれば、自民党内において、石破首相を参院選の「顔」として戦えないとの見方が広まり、いわゆる「石破おろし」が生じ得る。
ただ、石破首相も新しい「顔」として期待されながら、結局は衆院選で敗北した。自民党内で選挙の「顔」を変える機運が盛り上がるか否か不透明だ。支持率が明確な危険水域へ突入するようであれば、「石破おろし」があり得るといったところではないか。
<参院選前のリスクシナリオ②:野党が起こす政局>
次に、野党が起こす政局について。例年、野党は会期末に衆議院において内閣不信任決議案を提出するケースが多い。
通常は否決されて、時の政権が継続するが、現在は少数与党であり、与党に協力している国民民主党が賛成に回れば、不信任案が可決し得る状況だ。仮に可決される場合、石破政権は10日以内に衆院を解散するか、総辞職しなければならない。野党の立場からみれば、内閣不信任決議案を提出するのは一種の賭けになる。
石破政権が衆院解散・総選挙に踏み切る場合、野党間の選挙協力の難易度が上がる。立憲民主党と日本維新の会は、参院選1人区で予備選実施などを通じた候補一本化を模索しているが、野党間で競合の多い衆院選が重なれば、衆院のみならず参院でも候補者調整が困難化するだろう。
一方、石破政権が総辞職する場合、自民党新総裁による政権誕生となる可能性と野党結集による政権交代となる可能性の両方が存在する。
そもそも内閣不信任決議案が可決されるということは、国民民主党が与党との協力を見直し、他の野党に協力している状況と考え得るため、「ねじれ国会」の状態での政権交代があり得る。
いずれにせよ、現時点では、与党は国民民主党に極力妥協する方針とみられ、かつ国民民主党は政局よりも政策実現を優先している。国民民主党が内閣不信任決議案に賛成する可能性は低く、すなわち野党主導の政局は起きづらいと予想する。