陳総参謀長は米国到着時、今回の訪問が「中米軍事関係の回復と好転を前提」とし、「相互の尊重と互恵に基づく新たな関係の構築」を意味すると述べた。
今回の訪米は関係の「回復と好転」、すなわち米側の対中配慮が「前提」であり、それこそが「相互の尊重と互恵」の真の意味だというのだろう。
そもそも、中国にとって自国要人の外国訪問は、双方の対立点が露呈せず、記者会見などにおいて「不規則発言」が続出せず、一般的な形で2国間関係の進展が印象づけられれば大成功である。
ところが、今回米側は逆のことを考えていた。S&EDで人民解放軍は米国との安全保障対話に公式参加したのだから、今回の訪米で陳総参謀長は米側の懸念に対し、共同記者会見など公の場で、これまで以上に分かりやすく答えるべきだと思ったに違いない。
さらに、中国人民解放軍のトップに米軍の戦闘能力を見せつけることにより、中国側の非現実的な希望的観測を排し、計算違いによる偶発的紛争勃発を避けることを通じて、中国人民解放軍を抑止する。これが米側の本音なのだろう。
17日の段階で人民解放軍は、中国軍制服トップが内外記者団の容赦なき攻撃に晒されれば、中国側の面子は立たないとでも考えたのだろうか。
だが、1月のロバート・ゲーツ国防長官の北京滞在中に殲20戦闘機の試験飛行をぶつけ同長官の面子を潰したのは、そもそも解放軍側ではなかったか。
今回、人民解放軍側は共同記者会見が「延期」された理由につき、いまだコメントしていない。共同記者会見の結果を見る限り、幸いサプライズはなかったが、同時に懸案事項について大きな進展もなかったようだ。
以上から判断する限り、解放軍最高幹部の「超ドメスティック」な体質は全く変わっていないようだ。残念ながら、今回中国は米側の思い通りにはならなかった。米中両軍間の信頼醸成にはまだまだ時間がかかりそうである。