12球団のうち資本関係がない企業、団体が所有する球場を本拠地として使用していた球団=(他)は、多額の「球場使用料」を支払っていた。これが経営を圧迫した。またダイエーホークスの本拠地はグループ会社が所有していたが、減価償却がまだ終わっていなかったために、ホークスもグループ企業に対して多額の球場使用料を支払っていた。

経営が瀬戸際にあった近鉄バファローズ

 中でも経営状態が深刻だったのが、近鉄バファローズだ。近鉄本体は、2000年3月期に初の連結最終赤字に転落、不振は続き、2002年3月期には株主無配当となり、近鉄グループは不採算事業からの撤退を余儀なくされた。

 近鉄バファローズは、不採算事業の最たるもので、35億円の収入に対して支出は85億円。近鉄本体から10億円を「広告宣伝費」として受け取ったが、それでも40億円の赤字だった。とりわけ大きかったのが1987年に開場した本拠地大阪ドームの使用料10億円。観客動員が伸び悩む中で、この負担が経営を圧迫した。

 近鉄は2003年、主力打者、タフィ・ローズを巨人に放出、それによって浮いた6億円を近鉄グループ1万人の「賃上げ」の原資にしたが「近鉄は、そこまで苦しいのか」と大きな話題になった。

 さらにこの時期、第3セクターの大阪ドームが経営危機に瀕していて、近鉄サイドに球場使用料を12億円に値上げしたいとの意向を伝えてきた。

 いよいよ窮地に陥った近鉄は、広告代理店電通の提案によって球団のネーミングライツ(命名権)の売却を打ち出した。提示された命名権は年間36億円、期間は5年以上。

 ネーミングライツは、以後、スポーツビジネスなどで一般的なビジネス手段となったが、この時点では、ほとんど前例がなかった。