この事業の売上高は、アップル全体の1割程度にすぎない。このカテゴリーの製品には、スマートスピーカー「HomePod」や腕時計端末「Apple Watch」、ゴーグル型ヘッドマウントディスプレー(HMD)「Vision Pro」などがあるが、これらはアップルの主力製品とは言えない状況だ。

 英フィナンシャル・タイムズ(FT)によれば、アップルは米アマゾン・ドット・コムや米グーグル、米メタといったガジェット製品を多く販売している企業に後れを取っている。こうして数多くの製品が市場に出回る中、アップルは自社製品をどう差異化していくのかと指摘されている。

絶好調のサービス事業で稼ぐ

 アップルがガジェットとAIで収益を上げるためには、サービスを拡充する必要があるのかもしれない。というのも同社のサービス事業は絶好調にあるからだ。

 アップルのサービス部門は、アプリ・音楽・動画配信などのコンテンツ・サブスクリプションサービスや、広告枠販売、米グーグルからの検索ライセンス収入、クラウドのサブスクサービス「iCloud」、デバイス保証サービス「AppleCare」、決済サービス「Apple Pay」など幅広い事業を展開している。米CNBCによれば、その粗利益率は74%と、アップル全体の46.2%を大きく上回っている。

 その24年7~9月期における売上高は、249億7200万ドル(約3兆8600億円)で、過去最高を更新し、8四半期連続で200億ドルを超えた。同社のサービス事業は今や主力のiPhoneに次ぐ事業規模となっている。

 こうした中、アップルはAIとサービスをどう融合させ、収益につなげられるのか。米ディープウォーター・アセット・マネジメントのマネージングパートナー、ジーン・マンスター氏は、「アップルは生成AIからどのように収益を上げるのか、今のところ見いだせていない」と指摘する。

 一方、FTの記事は、AI関連のプレミアム(有料)サービスを拡充し、サブスクリプションとして販売する方法が考えられると伝えている。現在、無料あるいは有料サービスの一部として提供しているAI関連の機能を、一層便利なものにし、最終的にそれらを切り離して独立したプレミアムサービスとして提供する。アップルのAI分野におけるサービス事業の成功は、それができるかどうかにかかっている、と記事は指摘する。