米アップルが10年続けてきた電気自動車(EV)の開発計画を断念したというニュースは投資家にとって朗報だったようだ。
米ブルームバーグ通信などの報道によれば、アップルはEV開発の人員を、スマートフォン「iPhone」などのAI(人工知能)機能の開発に振り向ける。一方、AIサービスの分野では、米マイクロソフトや米グーグルといった競合の動きが速く、アップルがこれらに追いつけるかどうかが注目されている。
アップル、再びiPhoneの機能拡充に注力
英フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、アップルのAI開発はこれまで主に、自動運転EVや複合現実(MR)端末「Vision Pro(ビジョンプロ)」といった新しいハードウエアの市場を開拓するための手段として進められてきた。しかしEVプロジェクトの終了と、MR端末の出足の鈍さに伴い、アップルは再びiPhoneの機能拡充に注力するようになった。
FTによると、もしAIの主戦場がスマホであるのならば、それはiPhoneに新たな活力がもたらされることを意味する。AIを活用した機能は、より高度な処理能力をスマホに要求する。そのため消費者に機種変更を促す材料となり得る。音声操作サービスの強化は、ワイヤレスヘッドホン「AirPods」や腕時計型端末「Apple Watch」といった周辺機器の重要性を高め、アップルのエコシステム(経済圏)の維持・拡大につながるという。
アップル経済圏の要は「サービス」
iPhoneを含むスマホは、すでに広く普及しているため、かつてのような大幅な販売の伸びは期待できない。アップルの売上高で見ると、2023年10~12月期は全体の6割弱を占めるiPhoneは697億200万ドル(約10兆4800億円)で、前年同期比6%増だった。一方、アプリ・音楽・動画配信などのサービス事業の売上高は同11%増の231億1700万ドル(約3兆4800億円)で、前四半期に続き過去最高を更新した。同部門の200億ドル超えは5四半期連続で、アップル全売上高に占める比率は、2割弱になった。