深刻な人口減少で2人目以降の出産に多額の補助金

 中国国家統計局によると、2022年末の中国の人口は14億1000万人となり、前年から85万人減少した。これは1960年代の大飢饉以来、中国が初めて経験する人口減だった。

 2023年末には、中国の総人口は14億0967万人となり、前年比で208万人減少。この年の中国の出生数は902万人、出生率は1000人当たり6.39人で、いずれも1949年の共産党創立以来最低の水準だった。中国の過酷で残酷な「一人っ子」政策が終了した翌年の2016年、新生児数は1786万人だったが、およそ半減した格好だ。

一人っ子政策が終了しても新生児数はおよそ半減した(写真:AP/アフロ)

 在米華人人口問題研究家で、いち早く中国の人口減少を見抜いた易富賢は、目下、この新婚育政策がまだ全国に拡大されていないのは、成果に対する評価が難しいからだろう、と指摘する。実際、強制性がなく、あまり生活に干渉せず、人権を侵さない形では、国家が個人の結婚出産に影響を与えることは難しいのだ。成果の手ごたえがないからこそ国務院が新たにテコ入れとしてこの通達を出したものと思われる。

 こうした通達を受けて、各地方は具体的政策を打ち出しつつある。たとえば、11月19日までに、甘粛省粛北県は条件が合えば2人目、3人目を出産した家庭に最高10万元の現金補助を与える政策を発表した。これはさすがに朗報として世論の関心を引いた。

 粛北県は甘粛省の6分の1を占める最大面積県。人口は少なく出生率が低下し続け、今年は全県の新生児は月当たり5人に満たない状況だった。この地域の少子高齢化問題に対応するために、現地政府は補助金政策をとり、2人目、3人目を出産した家庭には、毎月最高1700元、3300元の補助金を3年間支払い、その上限は10万元とするとした。

 ほかにも医療費や産休手当などの支援策を盛り込んだ。また、この補助金目当てに粛北県に移住してきた世帯には1万元の報奨金も出すとした。

 だが、こうした「アメの政策」だけではなく、中国らしい「ムチ」の政策もあるようだ。