ガスの脱ロシア化に揺り戻しが生じる可能性も

 11月から欧州委員会の新執行部を率いるフォンデアライエン委員長は、引き続き、天然ガスの脱ロシア化の推進を図る強調している。しかしながら、その崇高な理念に現実が追い付くかどうかは、また別の話だ。そもそも、フォンデアライエン委員長のEUにおける求心力は低下し、加盟国を鼓舞する力が落ちている点が気がかりである。

 それに、親ロシア派でないEU加盟国の中にも、ウクライナに対する支援疲れや高インフレに対する不満が溜まっていると考えられる。むしろ意識すべきは、ガスの脱ロシア化に関して、多少の揺り戻しが生じる展開だろう。ロシアがウクライナに侵攻して1000日が経過したが、EUのロシアへの対応も岐路に差し掛かっているといえそうだ。

※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です。

【土田陽介(つちだ・ようすけ)】
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)調査部副主任研究員。欧州やその周辺の諸国の政治・経済・金融分析を専門とする。2005年一橋大経卒、06年同大学経済学研究科修了の後、(株)浜銀総合研究所を経て現在に至る。著書に『ドル化とは何か』(ちくま新書)、『基軸通貨: ドルと円のゆくえを問いなおす』(筑摩選書)がある。