マスク氏配下の企業が相互連携で加速度的成長を果たせる可能性も
行政の効率化というと政府機能の縮小、リストラ、規制緩和という印象を持たれがちで、実際にそう報道されることが多い。だが、ある経済産業省OBはこんな見解を示す。
「DOGEの構想はおそらく単なる無駄の削減みたいなものにはならないでしょう。規制緩和を推進する一方でシリコンバレーなどに集積するテック企業の技術を積極的に導入し、社会基盤そのものを変えていこうとするのではないでしょうか。日本ではデジタル庁のDX構想がそれに似ていると思います」
マスク氏の保有している主要企業を見ると、テスラはBEV、自動運転、エネルギー創出などのテクノロジーファーム。スペースXは宇宙輸送のほかに人工衛星を使用する情報通信プラットフォームのスターリンクを構築している。ほかにも生成AI開発のニューラリンク、インフラ建設会社、そして大統領選において何かと話題となったSNSのX(旧Twitter)、など、プラットフォーマー企業を幅広く所有している。
社会の仕組みを先進的なものに変える判断と、その障害となりそうな規制緩和・撤廃の判断の2つを1つの組織が行うのは権力の集中という観点では少々危険な気もするが、それができればマスク氏配下の企業が単独ではなく相互連携で加速度的な成長を果たせる可能性が見えてくる。マスク氏ならそのくらいの野心は持っていても不思議ではない。
問題はマスク氏がDOGEのトップという権力を行使して社会を思い通りに変えられるかということだ。すでにテック企業の力を使った社会変革を安易に推進するのはその恩恵にあずかる層と外れる層の格差を拡大するだけという批判は多く出ている。第2次トランプ政権がマスク氏に盤石の権力を与えたとしても、どこまで実行できるかは未知数だ。
もしマスク氏の皮算用が空振りに終わった場合、配下企業の中で目下、稼ぎ頭であるテスラのBEVビジネスが補助金の縮小・撤廃で被害を受けるだけということになる。が、マスク氏は反対するどころか支持の意向を示しているとされる。一体なぜなのか。