今年、車の暴走事件が6700件以上も
ナイフで無差別に人を襲う事件を中国語では「砍人」と言い、車で人を無差別にはねる事件を「撞人」と言う。ちなみに、橋やビルから自殺する事件を「跳楼」「跳橋」と言い、こうしたキーワードは最近の中国の世相を表す事件として、頻繁に見る。こうした事件は模倣性があり、一つ起きると、繰り返される。
たとえば小学校の前で子供をナイフで襲う社会報復性のテロ事件が一つ起きると、その後、同じパターンの事件が繰り返される。
車で無差別に人を襲う事件も当然これが初めてではない。広東省でいえば、昨年1月11日、広州市天河区の体育東路でBMWが次々と通行人をはね6人が死亡、29人負傷した事件がある。犯人は一審で死刑判決が出た。
今年3月19日には、この一日だけで、北京、遼寧省瀋陽、浙江省台州の3カ所で車で人を無差別にはねる事件が相次いだ。北京では1人死亡17人負傷、瀋陽では3人死亡1人負傷、台州では職業技術学院の校区で事件が発生し10人の学生を含む19人が次々はねられ3人が死亡。犯人はいずれも20代男だ。
今年3月はこのほか、1日、8日、16日にも同様の事件が起き、20日間で私が確認できるだけで7件の「撞人」事件が起きている。今年10月には山東省青島市の人民路で共産党を罵りながら逆走する自動車が、コンクリートミキサー車や何台もの車を巻き込む大事故を起こした。10月21日は、武漢の農村でも車が故意に暴走して、22人を次々とはね、7人死亡11人重傷。この時点の中国メディアによれば、こうしたわざと人をはねる自動車暴走事件は今年だけで6758件ある、という。
このような事件が近年、特に多いのは、一つには中国社会の閉塞感の高まりがある。経済低迷が続き、失業率が高まり、不動産や株価は下がるが、生活物価は高騰、イデオロギー統制、情報統制が厳しく、未来に希望が持てない状況が続いている。こうした状況で不満が高まるも、その不満を公言することははばかられ、内心の鬱屈がどんどん膨らんでいる。