「短命政権」との永田町予想を覆す“想定外の動き”とは?
仮に今回の面会が短時間に終わったとしても、次の手を考えるべきだろう。
石破氏と同じく党内基盤が脆弱で、田中角栄氏の影響下で政権運営せざるを得なかった中曽根康弘元首相は、首相就任の翌年(1983年)、首脳会談で来日したレーガン大統領夫妻を奥多摩の日の出山荘に招待し、そこでチャンチャンコ姿でほら貝を吹き、お茶をたててもてなし、レーガン氏のハートをしっかりとつかんだ。
この日の出山荘会談を機に「ロン・ヤス」関係は強化され、中曽根氏はレーガン氏のバックアップもあり、5年の長期政権を実現した。
長期政権を築いた歴代の首相と大統領との個人関係でいえば、小泉純一郎元首相は訪米時、首脳会談後にブッシュ元大統領に大ファンだったプレスリーの旧邸宅に案内された。
安倍晋三元首相はトランプ氏と何度もゴルフを共にした。石破氏はどうやってトランプ氏との個人的関係を構築するつもりなのだろうか。党内基盤がぜい弱な石破氏にとって、トランプ氏を後ろ盾にできればこれに勝るものはないが、そんな力量があるかどうか。
トランプ氏との面会と言えば、今年4月に麻生太郎元首相・党最高顧問が、いち早くニューヨークを訪れ、トランプタワーで1時間にわたり2人だけで差しの会談を行っている。次期大統領選出をにらんでの関係構築が狙いだった。
その狙いは見事に当たったが、国内のトップ選びでミソをつけた麻生氏はキングメーカーの座から転落。派閥の人数も40人から31人に減ってしまい、一部では本人の引退説まで流れたが、したたかなベテラン政治家がそう簡単に退くとは思えない。
トランプ氏との関係を武器に、今後の「ポスト石破」政局の中で再びキングメーカー的な動きをしてくる可能性があるかもしれない。そんな麻生氏に対して石破氏はどう振る舞うのか。総裁選最終盤のときのように、天敵と言われてきた麻生氏に日米関係を口実に協力を求めるような場面があるのだろうか。
早ければ3月の来年度予算成立まで、遅くとも夏の参院選まで──。これが石破政権の先行きに対する大方の見方である。そんな永田町の常識を打ち破るには、石破氏自身の政治力、行動力でトランプ氏との関係強化を図るなど、想定外の動きをするしかない。
もはや“評論家”ではいられない。行動の時である。
【山田 稔(やまだ・みのる)】
ジャーナリスト。1960年長野県生まれ。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。主に経済、社会、地方関連記事を執筆している。著書は『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』『分煙社会のススメ。』など。最新刊に『60歳からの山と温泉』がある。東洋経済オンラインアワード2021ソーシャルインパクト賞受賞。