トランプの台湾接近を警戒する習近平
ロシア・ウクライナ戦争が停戦になることは喜ばしい半面、その分、インド太平洋の米中対立がより先鋭化し、特に台湾海峡をめぐる戦争リスクが一層高まることは、日本などにとっては、決してうれしいことではない。だが、こうした危機はうまくしのぐことによって、日本にとっても台湾にとってもチャンスとなるかもしれない。
中国にとって、一番の懸念は、トランプ政権任期中に、米台関係がある種の一線を突破して、台湾が国際社会における承認を再び勝ち取るための後押しをすることだ。
習近平は、蔡英文が総統になった2016年、やはり米大統領選を勝利したトランプが、数十年来の慣例を破り、蔡英文に電話して「プレジデント(大統領、総統)」と呼び掛けたことを覚えているはずだ。トランプの対台湾政策に関して非常に警戒している。思えば、米台急接近は第1次トランプ政権からスタートしたのだ。
ましてや台湾の今の総統は頼清徳であり、彼は新二国論や祖国論を打ち出して台湾の国際社会における国家としての認証を強く求めている。同時に、米国からの武器購入にも積極的で、中国との戦争準備、国防強化こそが最大の戦争回避の方法であるという主張をして、戦争を恐れる様子がない。
そして、習近平は台湾包囲型の軍事演習などを繰り返し台湾の頼清徳政権を軍事恫喝しているが、その恫喝が効果を得られないと気付いたとき、習近平がどのような態度に出るか、それに対してトランプがどのような態度を見せるかによって、台湾海峡の風景は一変する可能性がある。