(放送コラムニスト:高堀冬彦)
秋ドラマ(放送期間は10~12月)が中盤に差し掛かりつつある。プライム帯(午後7~同11時)だけで18作品もあるから、全て観るのは難しい。一方で秀作は見逃したくない。そこで今からでも観ておきたい秀作5作品を紹介したい。
まず5位はテンポのいいサスペンスである。
【5位 NHK『3000万円』(土曜午後10時)】
主人公の佐々木祐子(安達祐実)は通販サイトの電話オペレーター。上司の嫌がらせにも負けず、一生懸命働いている。だが、生活は苦しい。戸建ての自宅を新築したばかりで、さらにひとり息子の純一(味元耀大)が月謝の高いピアノ教室に通い、夫で元ミュージシャンの義光(青木崇高)があまり仕事熱心ではないからだ。
ある日、祐子ら一家3人が乗った車がバイクと接触事故を起こす。バイクを運転していたのは謎の女性・ソラ(森田想)。そのバイクが民家への強盗事件に使われたものだったことから、ソラは入院先の病院で警察の管理下に置かれる。
一方で純一はソラが持っていた3000万円をこっそり自宅に持ち帰ってしまう。ソラが仲間と強盗を犯して得た金である。純一は口にこそしなかったが、一家の暮らしが豊かではないことに子供ながら気付いていた。
純一のネコババを知った祐子は慌てた。「今の世の中、謝ってもやり直せないんだから!」と叱る。しかし、この言葉は祐子に返って来る。警察に届けるのが惜しくなり、義光とネコババしてしまうのだ。
「私も(3000万円が)欲しい!」(祐子、第1回)
祐子は罪の意識が薄かった。自分は平凡な市民という思いが強かったからだ。ソラの3000万円はもともと犯罪組織のものであるため、祐子はその中堅幹部・蒲池(加治将樹)に追われるが、「なんでこんなことになっちゃったんだ」と被害者顔をする。蒲池は「(ネコババするのなら)最悪のことは覚悟しておかなくちゃ」とあきれた。
直後に祐子は病院を逃走させたソラと一緒に蒲池を殺害する。意図的ではなかったものの、殺したことに変わりはない。遺体は湖に沈めた。その罪悪感も瞬く間に消え、今度は自分と義光が罪から免れるために奔走する。祐子の終着点が見ものである。
次はちょっと毛色の変わったリーガルドラマである。