ウィーン市内を走る路面電車(写真:Emmanuele Contini/NurPhoto/共同通信イメージズ)ウィーン市内を走る路面電車(写真:Emmanuele Contini/NurPhoto/共同通信イメージズ)
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>>「公共交通のポテンシャルが地図でわかるオーストリア、ローカル線「赤字か否か」の議論から脱却できぬ日本が欠く発想」から続く

(柴山多佳児:ウィーン工科大学交通研究所 上席研究員)

公共交通サービス水準の地図を他のデータと重ね合わせる

 地図上に表現できるということは、他のさまざまな地図上に表現可能なデータと重ね合わせることができる。

地図上に可視化した例。FLADEMOプロジェクト内部資料より(Tadej Brezina, Manuel Hammel両氏による作成)地図上に可視化した例。FLADEMOプロジェクト内部資料より(Tadej Brezina, Manuel Hammel両氏による作成)
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※地図の詳しい解説は前回記事「公共交通のポテンシャルが地図でわかるオーストリア、ローカル線「赤字か否か」の議論から脱却できぬ日本が欠く発想」をお読みください。

 ここが重要なポイントで、このPTSQCと他のデータの地図上での重ね合わせから、第二の機能である「社会的機能」や、第三の機能である「自動車の諸問題の緩和機能」を加味した上で、公共交通のポテンシャルを推し量ることができるようになるのである。

 地図上に表現できるデータは様々ある。その最たるものは人口だろう。

 日本でも国土地理院が国土数値情報として人口のメッシュデータを公開している。これと重ね合わせれば、人口が多いのに公共交通サービス水準が低い場所を特定して、そこの公共交通を強化することができる。

 またメッシュごとの人口密度も計算できるが、同様にして、公共交通沿線の人口密度を高める「コンパクト化」をどこで推し進めたらいいかの判断材料にもなる。

 人口と同様に、就業者数も同様に表現できる。日本では経済センサスに丁目ごとの就業者統計があるが、これを使うと考えればよい。

 就業者数は多いのに公共交通のサービス水準が低いところは、公共交通利用を伸ばすポテンシャルがある。

 以下のグラフと地図は筆者がコーディネータを務めたオーストリア政府からの受託研究の成果の一部である【グラフは次ページへ】。