ウォーターゲート事件で名を馳せたワシントン・ポスト紙も政治圧力に屈してしまったのか(写真は2013年8月5日、ジェフ・ベゾス氏が買収した時のもの、写真:ロイター/アフロ)

ペンは剣よりも弱し

「ペンは剣よりも強し」とは、英国の政治家・小説家のエドワード・リットンの名言だ。

 だが、米国の大新聞社はどうやら「もしトラ」の報復を恐れて「ペンは剣よりも弱し」を立証してしまったようだ。

 販売収入、広告収入の激減で瀕死の状態にあった米大新聞は、デジタル移行に功を奏したニューヨーク・タイムズのような一部の新聞を除き、億万長者が買収し、経営されている。

 FOXニュース、ウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・ポストを傘下に置くメディア帝国のオーナーであるルーパート・マードック氏は保守派の守護神的存在だが、ワシントン・ポストはアマゾン・ドットコム創設者で宇宙企業「ブルーオリジン」オーナーのジェフ・べゾス氏が私物化。

 かつては「ブルーステート」の雄として名を馳せた、ロサンゼルス・タイムズのオーナーは、がん治療薬などの開発で巨万の富を得た南アフリカ出身の中国系億万長者のパトリック・スン・シオン氏の社会的ステータス保持のためのオモチャに成り下がった

(今や、地元ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手の機関紙、ハリウッド業界紙になっている)

(マードック氏を除けば)ポストもタイムズもマスメディア以外の商売で巨万の富を得た億万長者が経営不振の新聞を買収し、その銘柄を使って社会的地位の名声を確保しているという点では共通している。

 これらオーナーにとっては、「無冠の帝王」であり「社会の公器」である新聞を所有することは、それ自体儲からなくとも何事にも代えがたい満足感があるようだ。