「山の神」候補が平地を快走

出雲駅伝、2区の区間賞に輝いた創価大・吉田響 写真/日刊スポーツ/アフロ

 創価大、躍進の原動力となったのが吉田響の爆走だ。「山の神」候補が、スピード区間でも強さを発揮した。吉田が目指したのは佐藤圭汰(駒大)が保持する区間記録(15分27秒)の更新だった。

「佐藤君の記録を抜くために、キロ2分43秒6ペースで押していこうと思っていました」と吉田。最初の1kmを2分37秒でぶっ飛ばすと、出雲の最短区間にライバルはいなかった。暑さと向かい風に記録を阻まれたが、区間2位の選手に32秒差をつけるダントツの区間賞となった。

 本人は「佐藤君の記録に程遠かったのは悔しいです」と納得していなかったが、「自分はロングが得意なんですけど、ショート区間でも走れることを証明できたのは自信になりました」と笑顔を見せた。

 吉田は今季4レースに出場して、すべてで自己ベストを更新。特に5000mは13分39秒94と大幅にタイムを短縮している。誰かについていくのではなく、自分でガンガンと切り込んでいくのが魅力の選手だ。

「全日本も他大学のエースと張り合えるような走りをして勝っていきたい。箱根駅伝は5区で区間記録を塗り替えて、『山の神』と呼ばれるような存在になりたいです」

 吉田響という“切り札”がいる創価大は11月3日の全日本大学駅伝でもレースを大きくかき乱してくるだろう。

伊勢路でも攻め込んでいく

 全日本は出雲を走った6人に加えて、前回1区4位の織橋巧(2年)、同7区4位のスティーブン・ムチーニ(2年)らが入る構成になるだろう。夏に故障のあった小池莉希(2年)が間に合えばさらに面白くなる。

 ムチーニは出雲の2日前に転倒。膝を打撲したが、全日本は万全な状態で臨めるだろう。前回は全日本がキャリア初駅伝で苦戦した部分があるが、箱根2区を経験して、今季は日本インカレ5000mで優勝した。1年前より明らかに力をつけている。

 またムチーニが出雲を欠場したことで、山口翔輝が1年生ながらエース区間を担い、夏に新型コロナウイルスに感染した影響で「7割くらい」の状態だった黒木陽向(3年)にも学生駅伝の出番がまわってきた。

 出雲駅伝で得た経験がチームの自信になっている。

「全日本は優勝を狙いつつ、最低限『3位以上』という目標をクリアしたいですね。できれば出雲でやりたかった展開に持ち込みたい」と榎木監督。全日本はアグレッシブな戦略で臨むことになりそうだ。

 前回は2区で11位まで順位を落としているだけに、前回5区区間賞の吉田響を2区(もしくは3区)に起用する可能性が高い。1区次第では、出雲2区で区間2位に32秒差をつけた“絶対エース”でトップに立ち、主導権を握ることができる。

 さらにムチーニを中盤区間に配置すれば、大量リードを奪うことも可能だ。後半区間はロードの安定感がある吉田凌(4年)、小暮栄輝(4年)、上りに強い野沢悠真(3年)らが控えている。

 ムチーニが終わった時点で2分近いリードを確保できれば、後続のチームも追いかけるのは難しくなる。創価大の過去最高順位は5位。3回目の出場で“日本一”に手が届くかもしれない。