まず22日の昼に、カザンの空港に降り立った時から、力なく見えた。むしろ後ろから連なってタラップを降りてきた蔡奇党中央弁公庁主任、王毅外相ら随行者の方が、元気いっぱいである。

10月22日、BRICS首脳会議に参加するためカザンの空港に到着した習近平主席(提供:Alexander Vilf/BRICS-RUSSIA2024.RU Host Photo Agency/ロイター/アフロ)
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「北朝鮮兵士のロシア派遣」でウクライナ問題が東アジアにも飛び火

 習主席は到着後すぐに、カザンのクレムリン宮殿で、ホスト国ロシアのウラジーミル・プーチン大統領との会談に臨んだ。11年半に及ぶ「盟友」で、今回が45回目の首脳会談だ。

10月22日、プーチン大統領との首脳会談に臨む習近平主席(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
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 中国側の報道によれば、この会談で習近平主席が語ったのは、以下のようなことだ。今年が両国国交樹立75周年であり、75年にわたって両国は揺るぎない友好関係を築いてきた。来年は国連創設80周年であり、両国は国連安保理の常任理事国同士として、全面的な戦略的パートナーシップを深化させてきた。そして中ロの揺るぎない関係のもと、団結協力するBRICSが、グローバルサウスにさらに多くの機会を提供するだろう……。プーチン大統領も、似たような発言をしたと、中国側は報じている。

 だがCCTV(中国中央広播電視総台)の映像で見る限り、両首脳の間にほとんど笑顔は見られない。本人たちの音声が入っていないので発言内容は窺い知れないが、どちらも厳しい表情で主張し、渋い表情で聞いている。

10月22日、プーチン大統領との首脳会談の際に見せた習近平主席の表情(提供:Stanislav Krasilnikov/BRICS-RUSSIA2024.RU Host Photo Agency/ロイター/アフロ)
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 習近平主席にしてみれば、「北朝鮮(朝鮮人民軍)をウクライナ戦争に参戦させるなど、何ということをしてくれたのだ」と、怒り心頭だったのではないか。それによって、「NATOのアジアへの拡大」や「アジア版NATO設立」(石破茂首相の持論)といった動きが起こることを、中国は警戒しているのだ。「ロシアとウクライナの問題を、東アジアに飛び火させるな」ということだ。

 実際、北朝鮮の派兵が報じられる直前の10月14日、中国はロシアのアンドレイ・ベロウソフ国防相を、北京に呼びつけている。この日は、中国人民解放軍が、台湾周辺の6カ所で、空母「遼寧」と戦闘機など153機を繰り出して軍事演習を行ったことが、大々的に報じられた。だがその裏で、董軍国防相はベロウソフ国防相から一日かけて、「北朝鮮参戦問題」について事情聴取をしたのである。