東京ゲームショウ2024での「プレイステーション」のブース(写真:つのだよしお/アフロ)
  • なぜ、企業は「売上目標」にとらわれるのか。計画には目標が必要だが、いまや売上目標が多くの企業で成長を妨げる弊害となっている。
  • 売上目標は会社から与えられたもので、組織と従業員の思考能力を奪う。自己満足に陥りやすく、市場環境の変化への対応力も損なう。
  • 連載1回目は、家庭用ゲーム機「プレイステーション」シリーズを手がけるソニーグループを取り上げる。プレステはなぜ、重視する目標設定を「販売台数」から「ユーザーがプレイした回数」に変えたのか。

(*)本稿は『売上目標を捨てよう』(青嶋 稔、インターナショナル新書) の一部を抜粋・再編集したものです。

【連載:売上目標を捨てよう】
ソニーグループはなぜ、プレステ事業で「遊んだ回数」を重視するのか?販売目標で見失う事業の本質
◎リコージャパン、受注率を飛躍的に高めた「カスタマージャーニー」はどう作った?(11/6公開)
◎日立製作所が進める「マスカスタマイゼーション」、特定顧客向けのソリューション事業から脱却した方法は?(11/7公開)
◎サントリーはどうやって安売り競争から抜け出した?小売りと組みAI・データ活用、生活提案型マーケティングへ(11/8公開)

 ソニーグループには、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」というパーパス(存在意義)がある。これは自社の在り方を明確にしたものだ。多様な事業に関わる11万人の全社員が同じ長期視点を持ち、価値を創出するためのものとして2019年に策定された。

青嶋 稔(あおしま・みのる) 株式会社野村総合研究所フェロー。1988年、精密機器メーカー入社後、10年間の米国駐在などを経て2005年より野村総合研究所に参画。2012年同社初のパートナー(コンサルタントの最高位)に就任。2019年同社初のシニアパートナー、2021年4月より同社初のフェローに就任。米国公認会計士、中小企業診断士。近著に『リカーリング・シフト』(日本経済新聞出版)、『価値創造経営』(中央経済社)など。

 同時にバリュー(価値観)も策定され、「Purpose&Values」として認知されている。これらは、「ソニーグループとして何を目指しているのか」「何のために存在しているのか」について共通認識を醸成することにより、“人の心を動かす”こと、そしてあらゆる事業の中心にあるのは“ひと”であることを明文化したのである。 

 ソニーグループはこの「Purpose&Values」に基づいて、それぞれの事業がどのような価値を創造するのかを策定し、外部に開示をしている。