カナレットが残した遺産

「カナレットとヴェネツィアの輝き」展示風景。カナレット《カナル・グランデのレガッタ》 1730–1739年頃 油彩/カンヴァス ボウズ美術館、ダラム

 こうしてヴェドゥータの第一人者となったカナレット。だが、美術家として高く評価されたのかというと、そうではない。彼はヴェネツィアの美術アカデミーに入会を申し入れたが、長く却下され続けた。美術アカデミーが歴史画と人物画を高く評価していたこと、そしてヴェドゥータはそれらよりも劣る、安易なものとして見られていたためと考えられている。念願かなって会員に迎え入れられたのは、晩年の66歳の時だ。

 だが、美術アカデミーに評価されずとも、カナレットは豊かで大きな財産を残した。ヴェドゥータによって、どれほど多くの外国人がヴェネツィアの美しさを知ったのだろうか。ヴェネツィアは麗しき水の都。現代でも多くの人が持つヴェネツィアのイメージづくりに、カナレットの絵画が貢献していることは疑う余地がない。

 さらにカナレットが後世の画家に与えた影響も大きい。19世紀の画家たちは、カナレットの作品を通して、ヴェネツィアが「絵になる」ことを知った。そして、この美しき水の都を描きたいと熱望した。

 本展ではカナレットの作品とともに、カナレット以降の画家が描いたヴェネツィアの風景画が紹介されている。ジェイムズ・アボット・マクニール・ホイッスラー、ウォルター・リチャード・シッカート、ウジェーヌ・ブーダン、ポール・シニャック、そしてクロード・モネ。彼らはカナレットへ敬意を払いながらも、一歩も二歩も先に進んだ新しい表現も試みた。

「カナレットとヴェネツィアの輝き」展示風景。 クロード・モネ《サルーテ運河》 1908年 油彩/カンヴァス ポーラ美術館

 美術史の中では軽く扱われることもあるカナレット。だが、彼の全貌を紹介する今回の展覧会を機に、評価は高まっていくだろう。一時代を築いた画家には、やはり人を惹きつけるだけの魅力がある。

 

「カナレットとヴェネツィアの輝き」
会期:開催中~2024年12月28日(土)
会場:SOMPO美術館
開館時間:10:00~18:00(金曜日は〜20:00)※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(11月4日は開館)
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)

https://www.sompo-museum.org/