カナレットが愛される3つの理由

カナレット《サン・マルコ広場でのコメディア・デラルテの上演》 1755-1757年? ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、ロンドン © Victoria and Albert Museum, London.

 カナレットが支持される1つめの理由は「正確な遠近法」。カナレットは若い頃から舞台装飾の画家だった父親の仕事を手伝い、「遠近法を用いて作品に奥行きを出す技術」を学んだ。さらにカナレットは制作に定規やカメラ・オブスキュラなどの道具を駆使したと考えられている。こうして生まれたリアル感いっぱいの風景画は、まさに写真のようだ。

「カナレットとヴェネツィアの輝き」展示風景。 カナレット《サン・マルコ広場》 1732–1733年頃 油彩/カンヴァス 東京富士美術館

 2つめは「適度なアレンジ」。“写真のような”と形容されるカナレットのヴェドゥータだが、そっくりそのままの風景を描いたわけではない。建物を大きくしたり、道幅を広くしたり、通行人の衣装を整えたり……。天候も、抜けるような青空が心地いい晴天ばかり。ヴェネツィアを理想的に見せる配慮といえるが、そこにわざとらしさを感じさせないのが彼の巧みさだ。

「カナレットとヴェネツィアの輝き」展示風景。肖像部分原画:ジョヴァンニ・バッティスタ・ピアツェッタ 画面構成、彫版:アントニオ・ヴィゼンティーニ《カナレットとヴィゼンティーニの肖像》 1735年 エッチング/紙 個人蔵

 3つめは「英国人のパトロン」。カナレット最大のパトロンは、ヴェネツィアで暮らす英国商人・銀行家のジョゼフ・スミス。彼は若き日のカナレットに才能を見出し、20年にわたって代理人を務めた。イギリスとのパイプ役を担い、カナレットにイギリス人が好む絵を指導。旅先から持ち帰りやすいよう、小型の作品を充実するようにもアドバイスした。スミスはカナレットを超売れっ子に仕立てた、敏腕マネージャーと言える存在だ。