法定速度を100キロもオーバーする時速160キロでの追突死亡事故で、先週(2024年10月10日)、新たな動きがあった。宇都宮地検が遺族の度重なる要望を受け、被告の起訴内容を「過失運転致死」の罪からより法定刑の重い「危険運転致死」に変更したのだ。事故発生から1年8カ月。なぜこれほど時間がかかったのか――。遺族からの連絡を受け、メディアで最初に本件を取り上げたジャーナリストの柳原三佳氏が本件の経緯を振り返る。
不意に告げられた「訴因変更」の知らせ
(柳原 三佳・ノンフィクション作家)
「素直に嬉しいです。ずっと長い間待っていたことなので。これでやっと土俵に上げていただき、とても感謝しています」
10月10日、宇都宮地検から「危険運転致死へ訴因変更をおこなう」という方針を聞いた佐々木多恵子さんは、安堵した口調でこうコメントしました。
このニュースは多くのメディアで全国的に報じられたので、目にした方も多いのではないでしょうか。
(外部リンク)事故から1年半以上… 時速160キロ追突死亡事故 宇都宮地検が危険運転致死罪に変更請求 遺族「やっと土俵に上がった」(TBS NEWS DIG)
実は前日の夜、筆者が多恵子さんと電話で話したとき、彼女は少し疲れた様子で、
「明日、新たな署名を届けるために宇都宮地検に行く予定です。今回の署名提出で、すでに7回目になります。検察官との面談も含めれば、いったい何度地検に足を運んだかわかりません。検察は訴因変更に対して前向きに検討しているとは言ってくれているのですが、なかなか答えが出ず、この先どうしようかと……」
そう話していました。それだけに翌日、「訴因変更」が告げられたことは意外でしたが、本件の刑事裁判は事故発生から1年8カ月たってようやく、「危険運転致死罪」として再開されることになったのです。
しかし、ここに至るまでには、遺族としての大変な努力があったのです。おそらく、多恵子さんが行動を起こさなければ、すでに刑事裁判は「過失」で判決が下され、終わっていたでしょう。