重要文化財「織田信長朱印状」 細川藤孝宛 (天正3年〈1575〉5月)21日 永青文庫蔵(熊本大学附属図書館寄託)

(みかめ ゆきよみ:ライター・漫画家)

永青文庫が収蔵する信長からの手紙が公開

 歴史好きならドラマで書状が燃やされるシーンを見て「貴重な史料が!」と叫んだことがあるのではないだろうか。たとえどんな内容でも、そこにはその時代の生きた記録が残されている。公的な文書はもちろんのこと、内容がプライベートであればあるほど、その人物の人となりを想像することができる。

 永青文庫では2024年10月5日から12月1日まで「信長の手紙―珠玉の60通大公開―」が開催されている。永青文庫が収蔵する信長からの手紙60通をすべて見られる、歴史好きならたまらない貴重な機会となっている。この60通がどれほどの数字であるかは現在確認されている信長文書がおよそ800通であることからも知ることができるだろう。

 永青文庫ではこれまで信長からの手紙が59通確認され、その全てが重要文化財に指定されてきたが、2022年に新たに1通発見され、全60通になった。その全てが本展覧会で展示されるのである。

 信長からの手紙が1箇所に60通も残されているところはほかにはない。これほどまでに集まったのは細川忠利の功績が大きいという。

「細川幽斎(藤孝)像」 伝田代等有筆 江戸時代(17世紀) 永青文庫蔵

 細川藤孝から始まる戦国大名細川家の3代目である忠利は、祖父藤孝、父忠興が信長から受け取った書状をできる限り蒐集し、先代の功を後世に伝えてきた。歴史好きとしては「忠利公ありがとう」の一言に尽きる。もちろん、それがなせたのは細川家が今日まで続き、貴重な資料を受け継いできたからに他ならない。