公判で触れられた食品トレーの件について吉田隆氏はこう説明する。

「ボクの名前が公判で取り上げられたことにまず驚いています。事件翌日の5月25日、都内から田辺市のドン・ファン宅に行ったのは事実です。そのとき定宿にしていた田辺市内のビジネスホテルが満杯だったのでドン・ファン宅で寝泊まりをしていました。以前にも何度か泊めてもらっていたのでそれ自体は珍しいことではありません。

 ドン・ファン宅に着いたボクは、大下さんや早貴被告から死亡状況を何度も繰り返し聞きました。その時、大下さんが『発見した時、社長の体はカチンコチンだった』と死後硬直が始まっていたことを指摘したので、時間的に考えると、ドン・ファンは何者かに殺害されたんじゃないかと、この時初めて疑いを持ったのです。

 その後、(25日の)夕方過ぎ、大下さんと早貴被告は近くのスーパー銭湯に行くと言っていました。ボクも『一緒に行かないか』と誘われたのですが、ボクシングの井上尚弥のタイトルマッチが気になっていたので、誘いを断ってドン・ファン宅で留守番しながらテレビを見ていました。

 キッチンにはボクが買ってキープしている焼酎のボトルがあったので、それをソーダで割って吞みながら試合を見ていましたが、食欲は無かったので何も食べていなかったと思います。だから公判で触れられた食品トレーにも覚えがありません」

任意同行、そして深夜の家宅捜索

 吉田氏がボクシングを観戦している最中、野崎氏宅に警察がやってきたという。

「若い男女の刑事6人が訪ねてきました。その対応をしている所に早貴被告たちが帰宅したのですが、そこで早貴被告は任意同行で田辺署に車で送られていきました。それを見送って、大下さんと『もしかしたら早貴被告はこのまま逮捕されるのかな』などと話をしました。その後、ボクはリビングの大きなソファーをくっ付けてベッド替わりにし、横になって就寝しました」(吉田氏)

2018年5月25日、「紀州のドン・ファン」野崎幸助氏が急死した翌日の夜、和歌山県警の刑事に妻だった須藤早貴被告(左)が任意同行を求められた瞬間。中央は野崎氏宅のお手伝いさん。(写真:吉田 隆)*写真は一部加工しています
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