一般とは異なるトヨタにおける「整理」の定義

■STEP1 トヨタ流「整理・整頓」

 一般的に私たちが日常で使う、自宅の掃除や片付けを行う際の「整理・整頓」と、トヨタで使われている「整理・整頓」は異なっていて、入社当時私も大きく戸惑った経験があります。

 そもそもみなさんが自宅の掃除や片付けを行う目的はなんでしょうか。清潔感や衛生を保持したい、足の踏み場や寝るスペースを確保したい、友達が遊びに来るから見た目を整えたい、などではないでしょうか。

 一方で、トヨタの「整理・整頓」の目的にはお金(時間や労力)の節約が加わります。

 従業員がものを探す時間も労務費というコストが発生していますし、ものが見つからずに買い足す場合も、つくり直す場合もコストが発生するからです。

 トヨタグループでは、「整理ができない人」は「仕事ができない人」と同義語で使われることがあります。「整理ができない人」=「判断ができない人」=「仕事ができない人」と評価されてしまうのです。

 このような発想のもとになっているのが、「整理」についての考え方です。みなさんは乱雑に散らかった机のまわりを「整理しなさい」と言われたら、どのように対応しますか。

 多くの方が、ひとまず、寄せて、まとめて、並べて、重ねて……と対応するはずです。しかし、トヨタでは異なります。

 トヨタでは、机の上などに散らかっているものをきれいに整える行為が“整列”、それに対して「ものごとの要否を判断して、不要なものを捨てる」行為が“整理”であると明確に区別しています。

 そして、もちろん整列と整理では、整理を重視します。ものがなければ、散らかることもないし、「探しもの」に費やす時間もなくなるからです。

 もちろん整列も大切ですが、不要なものを見栄えよく並べてもあまり意味はありません。できる限りものを捨てていくという発想は、前回ご説明した「ECRSの4原則」のうちの「Eliminate=なくす」と同じ考え方です。