待ったなしの「地方創生」が全く進まないワケ

 政策論でいえば、地方創生は待ったなしのテーマである。

「どんどん人口が減っていく地方であってはならない。地方を守りたい」

 決選投票前の演説で地方衰退への危機感をあらわにした石破氏。東京一極集中の是正、地方活性化が叫ばれて久しい。コロナ禍でリモートワークや東京転出の動きがあり、転機が訪れる可能性が指摘されたが、コロナ禍が収まれば元の木阿弥。東京都の推計人口は過去最多の1418万人(2024年8月1日現在)となっている。

 地方創生に関しては、中央からの補助金行政がメインで、そこに都会のコンサル業者が介在してロクなことになっていないのが実情だ。

 福島県内で企業版ふるさと納税を原資にした高規格救急車の研究開発事業が「手続きの公正性を欠いた」などと問題となり、中止に追い込まれるという事態がクローズアップされたが、地方自治体がコンサル業者などに丸投げする体質が改まっていない。これでは本当の意味での地方創生は無理である。

 どこに打開策を見いだすのか。石破氏は9月24日の総裁選討論会で「婚姻率が低いところは人口が減る」と指摘し、女性の都会への流出を抑えるために「若い人に選ばれる地方を作る」と訴えていた。

 そのための対策として、産業の国内回帰、国内のサプライチェーン整備などを掲げていたが一朝一夕に進む話ではない。熊本のTSMCのように外資系企業を誘致すればいいかと言えば、それだけでは問題の根本解決にはならないだろう。

 問題は地方自治体が独自に、主体的に動くことができるような環境整備が欠かせないことだ。片山善博・元鳥取県知事は「財政面での地方分権が必要」と指摘している(JBpress/9月28日記事)が、重要な視点である。首相就任中にどこまで道筋を付けられるか。一つでもモデルケースを構築できればいいのだが……。