企業や大学などに受付や秘書を送り込む、とある派遣会社の担当者に聞いたところ、中高年男性の応募は増えているという。

「最近は50〜60代のおじさんから必ず応募がある。リストラされた人、介護離職した人、リタイアした人などいろいろ。こちらとしてはなるべく女性を採りたいけれど、最低賃金だと女性もなかなか集まらないから、仕方なくおじさんを採用することもある」

 本業をリタイアしても、ある程度生活にゆとりのある人は、最低賃金でも「楽そうで聞こえのいい仕事」を選ぶのかもしれない。

イジワルな教授よりもヤバい存在

「私の職場にはハケンおじさんが二人います。一人は元テレビ局勤務、もう一人は元大手メーカー勤務。二人とも60歳前後で、ほかのハケンさんと同じように最賃で働いています」

 こう話すのはとある都内の有名大学の教員控室で働く、派遣リーダーのA子さん(30代)。保育園のお子さんがいるワーママである。

「この仕事は最賃なので、若い子は全然来ません。基本的に子育てが一息ついた40〜50代のマダムが多い職場です」

 A子さんが働いている大学にある教員控室というのは、一日に50人前後の教授、助教授、講師が出入りする。教授陣は授業前にここに来て、授業のプリントを印刷したり、給茶機のお茶を飲んだり、コンビニのおにぎりを食べたりした後に各教室に散らばる。

 A子さんたちハケンは常時3〜4人が交代で入る。その仕事といえば、教授たちににこやかに挨拶する、電話に出る、コピー機の用紙を補充する、授業で使う備品の管理をするくらいだという。

「たまにコピー機がおかしい、教室のパワポが写らないとかで教授から呼び出されますが、だいたいすぐに解決します。臨機応変さが求められますが、特段スキルが必要な仕事ではないです」

 お茶くみやコピー取りはやらないことになっている。とにかく、何かあった時のために「控えている」仕事のようだ。

「この仕事の最大の試練は、イジワルな大学職員とイジワルな教授です。命令口調で無理難題を言う人がいます。でも、最近はハケンおじさんのほうがやっかいな存在で…」

 A子さんはにわかに表情を曇らせる。