彰子が敦康親王と交わした「約束」は守られるのか

 彰子が“キャラ変”した結果、一条天皇との間に待望の世継ぎが無事に誕生する。一見、今回の放送は良いことずくめのように見える。しかし、いくつか今後が心配になる不穏なシーンもあった。

 まずは、亡き藤原定子が忘れ形見として残した、一条天皇の第1皇子・敦康親王(あつやすしんのう)のことだ。

 ドラマでは、出産が近づく彰子に敦康親王が「子が生まれたら、私と遊ばなくなるのでしょう?」と心細さを吐露するシーンがあった。子どもというのは、大人が思っている以上に、いろいろと察しているものだ。「私は中宮様の子ではありません。真の子がお生まれになれば、その子のことが愛おしくなるのは道理です」とまで言っている。

 悲しい感情を隠して気丈に振る舞う敦康親王に、彰子ははっきりとこう伝えている。

「親王様がほんの幼子であられた頃から、親王様と私はここで一緒に生きてまいりました。今日までずっと……帝のお渡りもない頃から、親王様だけが私の傍にいてくださいました。この先も私のそばにいてくださいませ。子が生まれても、親王様のお心を裏切ることは決してございませぬ」

 しかし、史実を見れば、この後は残酷な現実が待ち受けている。彰子が生んだ子は「敦成親王(あつひらしんのう)」と名づけられ、一条天皇にとっては第2皇子でありながら、第1皇子の敦康親王にとって代わって後継者となる。

 一条天皇の本意ではなかったが、藤原行成(ゆきなり)が説得役となったようだ。今後の放送では、行成が難しい立場に追い込まれながら、ネゴシエーターとして力を発揮するのだろう。

 彰子もまた一条天皇の望み通りに、自分の息子ではなく、敦康親王に継がせるべきだという考えだったが、道長に押し切られることになる。その結果、行成が『権記』に「后宮は丞相を怨み奉られた」と書くように、彰子は父・道長のことを恨んだのだという。

 今回のドラマでは、彰子の思いやり深さが巧みに表現されている。確かに、この彰子の性格ならば、わが子よりも敦康親王の方を後継者に、と考えただろう。そして、血のつながった親子でなくても、彰子にとって敦康親王がいかに大切な存在なのかも、今回の放送でよく伝わってきた。

 これまで彰子と敦康親王の親しげな様子をじっくり見てきただけに、見守る視聴者にとっても、今後の展開は切ないものになりそうだ。彰子が道長に反発するシーンがどんなふうに描かれるのかにも注目したい。

NHK大河ドラマ『光る君へ』で藤原彰子役を熱演する見上愛さん“キャラ変”に魅了される視聴者が続出!中宮・彰子役を熱演する見上愛さん(写真:共同通信社)