日本側では「関心」だが中国側では「懸念」

 実際に、日中間で合意した内容は、4項目である。以下、日中双方の発表文を、項目ごとに併記してみる(中国側発表文の日本語訳は近藤)。

日本側①「日本側は、ALPS処理水の海洋放出をIAEA安全基準及び国際法に整合的に実施し、人体や環境に負の影響を及ぼさないよう最大限努力するとともに、海洋の環境及び生態への影響に関する評価を継続的に行っていく旨を明確にした」

中国側①「日本は、国際法の義務を切実に履行することを明確にした。そして人体と環境に負の影響を与えないよう最大限の努力を尽くすこと、合わせて引き続き海洋環境及び海洋生態の影響評価を行っていくことを明確にした」

 ほぼ同じだが、若干の表現が異なっている。なおIAEAは、日本のALPS処理水に「安全のお墨付き」を与えた国際原子力機関である。

日本側②「日本側は、中国を含む全てのステークホルダー国の関心を踏まえ、IAEAの枠組みの下で海洋放出の重要な段階における長期的かつ国際的なモニタリングが拡充されることを歓迎するとともに、中国を含む全てのステークホルダー国がこれに有効に参加し、それら参加国による独立したサンプリングや分析機関間比較が実施されることを確保する」

中国側②「中国などの全ての利益相関国(ステークホルダー国)の懸念に基づいて、日本側はIAEAの枠組みの下で設立された、海洋排出の重要な段階における長期的かつ国際的なモニタリングがカバーすることを歓迎する。併せて、中国などの全ての利益相関国が有効に参画することを確保し、それら参与国の独立したサンプリングや分析機関間の比較が実施されることを確保する」

 日本側では「中国を含む」と、中国が「ワン・オブ・ゼム」のように書かれているが、中国側では「中国などの」と、中国が中心であるかのように書かれている。また、日本側では「ステークホルダー国の関心」となっているが、中国側では「ステークホルダー国の懸念」となっている。「関心」と「懸念」では大きく意味が異なる。