すべては永遠に続いたが、やがて終わった

 8月1日釈放されたカラムルザ氏は寝ても覚めてもプーチンのロシアやアレクサンドル・ルカシェンコ大統領のベラルーシの刑務所につながれた何百、何千もの政治犯が脳裏に浮かぶ。小さな窓、鉄格子のついた独房の中を歩き回り、壁を見つめるだけの生活を思い出す。

 カラムルザ氏は西側諸国に、プーチンやルカシェンコに対して政治犯の釈放を働きかけ続けるよう求めた。「一部の欧米の専門家や評論家は、プーチン政権は非常に安定しており、永遠とは言わないまでも、長い間続くだろうとの見解を語る」

 カリフォルニア大学バークレー校のアレクセイ・ユルチャク教授(人類学)は著書『最後のソ連世代』(みすず書房。原題「Everything Was Forever, Until It Was No More:The Last Soviet Generation」)の中でソビエト社会主義の体制下で暮らしていた人々にとって崩壊は全く予想外であると同時に全く意外でもなかったと指摘している。

 公式のイデオロギー的言説が蔓延していたにもかかわらず、日常的な実践はしばしばそれらから逸脱し、創造的に解釈されていた。人々は何十年もの間、永遠に続くという前提のもとに生きてきたが、ソビエト社会主義体制の崩壊は急速かつ突然起こった。