ワイヤレスイヤホンが普及し、街中でもイヤホンをしたまま歩いているのはもはや普通の光景だ。イヤホンはそもそも音楽や音声を聴くためにつけるものと思いがちだが、実は何も音楽を流さず、「無音でイヤホンをつけている」人が増えているようだ。音を流さずただ耳につけているだけのイヤホンに、一体どんな意味があるのだろうか。
(杉原健治:フリーライター)
オリンピックでも活躍した「無音イヤホン」
2024年パリオリンピック・スケートボード男子ストリートで、金メダルを獲得した堀米雄斗選手。もう後がない最終5回目のトリックを見事成功させ、東京五輪に続く五輪2連覇を果たした。その際、耳につけていたイヤホンには「できる限り集中するため」音楽は流れていなかったという。
堀米選手と同じように、たとえばカフェで勉強する際や通勤・通学電車での読書など、周囲の音をシャットアウトして集中力を高めるためにイヤホンをつけている人が多いようだ。最近ではノイズキャンセリングの性能が高いイヤホンが多く販売されているのも、集中力を高めるのに一役買っているのだろう。
ちなみにノイズキャンセリング機能とは、周囲の音(ノイズ)を低減させる機能。イヤホンのイヤーパッドの素材や構造を工夫し物理的にノイズを遮断する方法と、イヤホンからデジタル信号を出してノイズの波形にぶつけて相殺する方法がある。最近はデジタル信号で相殺する技術が発達し、より遮音性の高い製品が続々と登場している。
ただ、イヤホンを無音でつける理由は、集中力を高めるだけではないようだ。