出産・育児と仕事の両立支援が「逆マタハラ」を招くケースも(写真:Monkey Business Images/Shutterstock)

妊娠中や出産後の女性に対するハラスメントは「マタハラ」と呼ばれるが、最近は妊娠や出産をした女性の側から職場の同僚にハラスメントを行う「逆マタハラ」が問題になっている。出産・育児休暇など、働く女性に対する配慮はさまざまな形で制度化されてきた。本来であれば、誰もが働きやすい職場をつくるためのこれらの制度が、新たなハラスメントを招く要因になっているとは、どういうことか。

(杉原健治:フリーライター)

職場を悩ませる「逆マタハラ」

 妊娠や出産、育児をする社員が、周りの同僚を傷つける言葉を投げかけたり、業務で過剰な負担を強いたりする行為が、「逆マタハラ」と呼ばれるようになった。

 妊娠中や出産前後、育児中の社員が会社を辞めずに働き続けられるようにするには、周囲の同僚のサポートが欠かせない。そのため、出産休暇や育児休暇、各種時短勤務など、企業はさまざまな制度を用意している。

 これらの制度を活用するのは社員の「権利」でもある。だが、その立場を過度に主張したり、制度の活用で周囲の同僚に及ぼす影響について配慮を欠いていたりすると、ハラスメントとして認識されるようになっている。本人に悪気がなくても、職場全体が「妊娠・出産によって生じた仕事の穴は周りの社員が協力して埋めるべき」という無言の圧力に満ちている場合もある。

 こうしたことから近年、「子どもができてからワガママ言いまくりの人がいて大変すぎる」「支える側の立場にもなって欲しい」といった「逆マタハラ」を訴える投稿がSNSで多くの共感を得ている。

 産休や育休、一時的な時短勤務の場合、いずれ職場復帰することが前提となっているため、なかなか欠員の補充をしにくいという側面もある。こうした「逆マタハラ」を引き起こしかねない職場の状況に、企業はどのように対応しているのか。