世間を騒がせた「資生堂ショック」

「逆マタハラ」が世間で大きな注目を集めたのは、今から約10年前に遡る。2014年、大手化粧品メーカーの資生堂が、子育て中の社員に対しても一般社員と平等に遅番や土日勤務を求める方針を打ち出した。これが、「資生堂ショック」と呼ばれるようになる。

仕事を肩代わりしてくれる同僚への配慮も大切=イメージ(写真:Leonardo da/Shutterstock)

 資生堂といえば、多くの美容部員を抱え、女性のための化粧品を扱う企業ということもあり、子育て中の女性社員が働きやすい環境づくりでは先駆的な企業とされていた。育児休暇や短時間勤務などの制度を積極的に導入しており、資生堂は“女性にやさしい会社”というイメージが定着していた。その資生堂の思いがけない施策に世間は驚いた。

 資生堂がこのような決断を下した背景には、今でいう「逆マタハラ」に通じる課題があった。育児中の社員で短時間勤務をする人が増えた結果、そうではない社員に遅番や土日勤務の負担が偏り、不満の声が高まっていた。そのため、育児のための時短勤務は遅番や土日勤務までを免除するものではなく、遅番や土日勤務がないことはあくまでも周囲の“配慮”によって実現していることなどを、改めて周知していったという。