始皇帝以来、皇帝の顔色をうかがって生きてきた中国の民衆は、習近平の顔色の変化を見て、中国が直面している事態が容易ではないことを悟った──。

 知人はそれがこの夏に中国人の景況感が大きく変化した原因だと言う。ちょっと穿(うが)ち過ぎとも思うが、今でも多くの人が風水を信じている国であり、あり得る話だと思った。

 9月になって、習近平の側近であり宦官と陰口と叩かれている蔡奇と、習近平を理論面で支えてきた王康寧の露出が減った。彼らに代わって李強首相の露出が増えたが、中国人は李強の手腕を信じていない。中国人は皇帝の顔色と側近の動静から、共産党王朝の秋を悟ったようだ。

 ここに来て、中国内で経済が最も堅強と言われていた深圳でも不動産価格が目に見えて下落し始めた。取引がほとんどないために正確な価格は分からないのだが、それでも大幅な下落を実感できる。政府発表より大きく下落している。政府発表がインチキであることは中国人なら誰もが知っている。政府発表を麗々(れいれい)しく報道しているのは、日本のメディアぐらいだろう。

広東省深圳市平山区の高架を走る自律走行バスの空撮写真(資料写真、2024年7月22日、写真:新華社/アフロ)

 全ての人が首をすくめて嵐が通り過ぎるのを待っている。だが嵐は去らない。それどころかますますひどくなりそうだ。今年の初めまでは、最後は共産党がなんとかしてくれると考えている人も多かったが、現在、そんな人はいない。