中国の歴史は皇帝が作る

 21世紀になっても中国は皇帝が統治する国である。より正確に言えば、皇帝を頂点とする巨大な官僚機構が統治する国である。中国は現在も学歴社会であるが、それは科挙の伝統に由来する。皇帝と官僚、そして科挙を抜きにして中国を語ることはできない。

 そんな中国が民主的な国に変わることは容易ではない。人々がバブル崩壊に立ちすくんだとしても、共産党の統治は簡単には崩壊しない。いい加減な官僚機構しか持たなかったイラクなどとは異なる。中国の官僚機構は北京大学や清華大学などを卒業した優秀な人材によって構成されている。

 中国の民衆は、若者の「タンピン」(寝そべり)が示すようにサボタージュ程度のことは行うが、本格的な反政府運動を起こすことはない。中国の民衆が本気で立ち上がるのは、飢えに苦しみ生命の危険を感じた時だけだ。だが現在の中国はそのような状況には程遠い。

 中国はこれから長期間にわたってデフレスパイラルに苦しむことになる。次の変化は皇帝である習近平の健康が悪化し、死亡した時に起きる。習近平は現在71歳、その健康は中国共産党が医療技術の限りを尽くして守っている。彼が90歳から100歳まで生きることは十分に考えられる。江沢民は96歳まで生きた。

 滅びそうだった清朝は西太后が亡くなるまで滅びなかった。そして西太后が亡くなるとわずか3年で滅びた。毛沢東が死ぬまで文化大革命が続き、亡くなると2年で改革開放路線に転じた。毛沢東がぼけて寝たきりになっていても文革は続いた。中国の歴史は皇帝が作る。この事実を忘れるべきではない。