検察の冒頭陳述では、野崎氏が亡くなる直前まで電話で話し、翌日会う約束までしていた私のことには触れていませんでした。それは私がジャーナリストであるため、検察がいろいろ聴取すれば、検察の捜査方針を詮索される恐れがあったからでしょう。今回の裁判では25回の審理で28人の証人が呼ばれる予定となっていますが、そこにも私は選ばれていません。これも同様に、野崎氏や早貴被告のことを“知りすぎた男”に裏を勘ぐられることを検察も弁護側も危惧しているからだと思います」(吉田氏)

「ドン・ファン」野崎幸助氏の葬儀で喪主を務めた、喪服姿の早貴被告(撮影:吉田隆)
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序盤は完全に検察ペース

 9月13日の第2回の公判では当時、野崎氏宅に駆けつけた警官が証人として出廷し、不審な死亡状況であったことを述べているが、寝室内で覚せい剤を見つけることはできなかったことも証言している。

 始まったばかりの裁判であるが、冒頭陳述だけを見ると検察側が相当な自信を持っていることをうかがわせる内容だった。

 これに対し弁護側は、廷内にいる裁判員に対して、

「『怪しいからやっているに違いない』、もしそう思ってしまうのなら結論が決まり、この裁判をやっている意味はありません。そもそも野崎さんの死は殺人事件なのか。グレーではダメです」

 と語った。

 次回以降、早貴被告の弁護士がどのような戦略を用いるのかに関心が集まっているが、弁護士は早貴被告が被告となった札幌を舞台にした約3000万円詐欺罪の裁判を担当した弁護士と同一人物である。あの裁判での弁護士の戦略を踏まえて想像してみると、検察側の主張を崩せるような反論ができるとは思えないのだが……。