ファーウェイは大規模な労働力を活用して、この問題に取り組んでいる。同社によると、20万7000人の従業員の50%超が研究開発に携わっており、その中には顧客の技術導入を支援するチームもある。

米国の対中輸出規制受け、昇騰を市場投入

 ファーウェイのAI半導体を巡っては、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)や英ロイター通信が、「昇騰910C」と呼ばれる新製品の投入準備を進めていると報じている。中国のAI向け半導体では、現行の「同910B」が最も先進的といわれるが、ファーウェイはそれを上回る性能の次世代品を開発中だ。

 ファーウェイの新型AI半導体は、米国の対中輸出規制強化により、エヌビディアが中国に最先端品を供給できなくなったことを受けたものだ。ファーウェイは、国内AI半導体市場の覇権を狙うべく、昇騰シリーズを投入した。FTによれば、この半導体は中国のAI企業の間で推論処理に広く採用されている。

 その一方で、エヌビディアは米国の輸出規制の技術基準を下回る製品を開発・投入し、中国市場で事業活動を継続している。同社は24年3月に開いた開発者会議で、次世代GPUシリーズ「Blackwell(ブラックウェル)」を発表した。そのうちの「B200」は、チャットボットのようなタスクにおいて、前モデルに比べて30倍の高速性を実現する。エヌビディアはB200の中国向けモデル「B20」も準備中とされる。

ファーウェイ製AI半導体への需要旺盛

 FTによれば、ファーウェイ(華為技術)は、米政府が23年10月に行った輸出規制強化を受け、昇騰910Bの価格を20〜30%引き上げた。同社の顧客からは、昇騰の供給が不足しているという声も上がっている。これは、中国企業が最先端の半導体製造装置をオランダASMLから購入できないという制約が要因とみられる。

 ただ、ファーウェイ製AI半導体に対する需要は依然として強いようだ。同社は24年8月29日、1〜6月期の売上高が前年同期比34%増の4175億元(約8兆5000億円)だったと発表した。ファーウェイ常務取締役兼ファーウェイクラウドCEO(最高経営責任者)である張平安(ジャン・ピンアン)氏は24年7月に上海で開催された「世界人工知能大会(WAIC2024)」で、「50種類以上の基盤モデルが昇騰で学習されている」と自信を示した。