4.収集の主な狙いは米軍艦の特定

 では、中国軍情報収集機が接近した位置からは何の情報が取れるのか。

 それは、九州に所在する自衛隊のレーダーサイトと軍艦および米軍艦のレーダー波の情報だと考えられる。

 8月26日は、台風10号が接近しているところであった。日米の軍艦は、佐世保港に帰投中か停泊中である。

 台風などで、関係部署と頻繁に連絡している時期である。

 中国は、この時期には重要な情報が取れると判断した。そして、今回の位置まで接近し、領空侵犯してでも情報を入手したかったのだろう。

5.特に欲しいのは米空母の電子情報

 中国軍は、米軍の艦艇、特に空母の位置情報を必要としている。

 なぜなら、その空母に対艦弾道ミサイルを撃ち込みたいからである。だが、そのためには刻々と動く米空母の位置情報を入手しなければならない。

 米空母の位置を特定するためには、空母が放出するレーダー情報が必要である。特に、空母の名前を特定したい。

 中国は現在、海洋監視システム、特に高高度・中高度・低高度のエリント衛星を多数打ち上げて、米海軍軍艦のエリント情報を収集している。

 中国がこれまで入手しているエリント情報では、米海軍軍艦の種類までは特定できていない。

 したがって、衛星からのエリント情報と情報収集機のエリント情報を照合して分析を行い、艦を特定できるようにしたいのだろう。

 米艦の種類・名称とその位置がリアルタイムで判明できれば、対艦弾道ミサイルや対レーダーミサイルを撃ち込むことができるようになる。

 中国情報収集機の接近飛行を、やりたい放題にやらせておけば、米艦(当然、自衛艦を含む)を守れない事態になっていく。