ダイエットだって禁煙だって…

 このように、近い将来の満足を優先する状態は、子どもが勉強するときにも生じています。遠い将来のことを考えればちゃんと勉強したほうがよいことがわかっているのに、つい勉強せずに楽をするという近い将来の満足を大切にし、その結果「勉強するのは明日からでいいや」と先送りしてしまうのです。

 こういった先送り行動は、子どもだけにみられるものではありません。長い目で見ればダイエットし、禁煙しなければならないことはわかっているのに、つい目先の誘惑に負けてたくさん食べてしまったり、タバコを吸ってしまう―こういう経験は、大人にだって少なくないはずです。

「目先の利益や満足をつい優先してしまう」ということは、裏を返せば「目の前にご褒美をぶら下げられると、今、勉強することの利益や満足が高まり、それを優先する」ということでもあります。実は、子どもにすぐに得られるご褒美を与える「目の前ににんじん」作戦は、この性質を逆に利用し、子どもを今勉強するように仕向け、勉強することを先送りさせないという戦略なのです。

『学力の経済学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)学力の経済学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)