パリ五輪の男子バスケットボール予選、フランス戦で指揮を執るホーバス監督(写真:AP/アフロ)

パリオリンピックのバスケットボール男子日本代表は、格上のフランス相手に延長戦で敗れたが、第4クオーター残り16秒の時点で4点をリードする大健闘だった。8月2日には決勝トーナメント進出をかけブラジル戦に臨む。男子日本代表を48年ぶりに自力での五輪出場権獲得に導いたのは、東京大会で女子日本代表を率いて銀メダルを獲得したトム・ホーバス監督。同氏はどうやって日本バスケのレベルを引き上げたのか。

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(東野 望:フリーライター)

バスケットボールの指揮官と会社の管理職は似ている?

 ホーバス氏は近著『スーパーチームをつくる! 最短・最速で目標を達成する組織マネジメント』(日経BP)で、バスケットボールファンのみならず、ビジネスパーソン必読の「組織マネジメント」について解説している。

 来日したのは1990年。トヨタ自動車に所属しバスケットボールをプレーしていたが、昼間は海外マーケティング部で英語版の社内報作成などを担当していた。男女の日本代表チームの監督を歴任したホーバス氏にとって、この経験は日本人の気質をよく理解したチームづくりに一役買っているという。

 バスケットボールの指揮官と会社の管理職の役割は似ているそう。チームで仕事をすることは、バスケットボールのチームスポーツと同じ。ホーバス氏は近著『スーパーチームをつくる! 最短・最速で目標を達成する組織マネジメント』(日経BP)で、チームづくりの要を次のように語る。

バスケットボールチームも会社のプロジェクトチームも、ただ能力のある人を集めれば、成果が上がるわけではありません。適材適所に人を配置し、集団としてどれだけ力を発揮できる体制を整えられるかが勝負です。

パワハラ回避の秘策は「コミュニケーション」

 ホーバス氏の指導の核は「コミュニケーション」だ。選手の力を引き出すために選手とコーチが互いにリスペクトし、その間に「橋」をつくってお互いを知る。そんなコミュニケーションがあって初めて、全員が同じ方向を向いて一蓮托生となることができる。

 そのためには時に厳しいことを言わねばならない場面もある。だが「パワハラ」と言われるリスクを考え、会社組織では、部下とのコミュニケーションの取り方に気を遣う上司も多いだろう。そんな現状に対して、コミュニケーションに重きを置くホーバス氏はこうコメントする。

一方的、かつ頭ごなしに命じるようなやり方だと、パワーハラスメントだと言われかねないので当然かもしれません。しかし、私からすれば、相互のコミュニケーションがきちんとできてさえいれば、パワハラのような問題にはならないのではないかと思います。