フィリピンは1995年、実効支配していた英語名ミスチーフ礁(フィリピン名:パンガニアン礁、中国名:美済礁)を中国に奪われた。これは、フィリピンが1991年にアメリカとの防衛協定を失効させ、翌1992年までに在フィリピンのアメリカ軍を追い出してしまったため、中国側が強気に出たものだった。中国はいまではそこに人工島を造り、3000m級の滑走路までこしらえてしまった。

 ともあれフィリピンは、ミスチーフ礁を中国に奪われたことで、約40km東にあるセカンドトーマス礁に対しても危機感を覚えた。そこで、第二次世界大戦中に使われた旧式の揚陸艦「シエラ・マドレ」を故意に座礁させ、この座礁船の修復という名目で、フィリピン人を駐留させてきたのだ。

中国が主権を主張するセカンドトーマス礁にフィリピンがあえて座礁させた揚陸艦シエラ・マドレ。かなり傷みが激しくなっている(写真:ロイター/アフロ)
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 中国側は現在、それを覆そうとしているのである。

二度あることは…

『報告』は、環境破壊の観点から論を展開する。

<仁愛礁の平らな部分とラグーンの斜面では、珊瑚礁が覆っている面積がものすごく小さくなっていて、軍艦の周辺でそれは顕著だ。リモート映像の反射実験を繰り返した結果、科学者たちは、岩礁の岩盤及び軍艦の周囲半径400mの範囲で、そうしたことが起こっていることを突きとめた。本報告の「岩礁」は、水深20mの浅瀬、平らな部分とラグーンの斜面を含む区域である。

 計算によると、2011年と比較して2024年は、仁愛礁の珊瑚礁の面積は総合的に約38.2%減少した。かつ軍艦の周囲半径400mの区域では、珊瑚礁が約87.3%減少した。(中略)

 データが示しているのは、見た目よりも仁愛礁の珊瑚礁が覆う面積は大幅に縮小しているということだ。(中略)軍艦周辺の珊瑚礁が覆う面積の減少は、さらに深刻だ>

 以下、軍艦「シエラ・マドレ」の座礁が、いかに海洋環境を破壊しているかを、写真を何枚も使って論じている。さらに、駐留するフィリピン人たちによる水質汚濁にまで言及している。

 こうした中国側の突然の発表は、何を意味しているのか? 私は中国側が、「本気」でセカンドトーマス礁を取りに来たと見ている。