中国は、前述のように1995年にミスチーフ礁の実効支配をフィリピンから奪った。また、2012年には英語名スカボロー礁(フィリピン名:カルブロ礁、中国語名:黄岩島)の実効支配を、やはりフィリピンから奪った。

 まさに「二度あることは三度ある」。ましてや、中国とフィリピンの「軍事力の差」は広がる一方なのだ。

 さらに今回、中国は、人民解放軍や海警局に加えて、自然資源部まで「参戦」させた。このことの意味は大きい。

駐留米軍追い出しを悔やむフィリピン

 現在の中国政府は、完全に習近平主席を頂点とした「縦割り構造」となっている。これまでこの問題は、習近平中央軍事委員会主席と人民解放軍もしくは海警局のやりとり、または習近平国家主席と外交部(外務省)のやりとりで決めていた。

 そこに今回、自然資源部まで加わったのだ。これは、習近平政権として、「国家全体で優先的に解決すべき有事」という認識に至ったことを示唆している。もしかしたら、11月のアメリカ大統領選挙でドナルド・トランプ前大統領が「復権」する前に、何らかの手を打っておこうという狙いかもしれない。

 フィリピンとて、尋常でない危機意識を抱いている。そこで、フェルディナンド・マルコス政権が第一義的に頼るのが、当然ながらアメリカだ。フィリピンは、前世紀末にアメリカ軍を追い出してしまったことを大いに悔いていて、2014年にアメリカと防衛協力強化協定(EDCA)を結び直した。それによって、国内4カ所でのアメリカ軍の使用を許可した。昨年はさらに5カ所増やし、計9カ所とした。