イスラエルがレバノン南部を空爆しヒズボラの幹部が死亡した=2024年6月12日撮影(写真:ロイター/アフロ)
  • 原油価格がじわり上昇してきている。米国でのガソリン需要の伸びに期待する声が背景にある。
  • だが、それは期待外れに終わる可能性がある。むしろ、地政学リスクの高まりを市場が再認識しはじめた。
  • 中東ではイスラエルとヒズボラが全面戦争に突入する可能性が高まっている。エジプトではイスラエルに弱腰な政権に対して民衆が反乱を起こす兆候が出ているとの報道もある。(JBpress)

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 原油価格はこのところ上昇している。

 米WTI原油先物価格(原油価格)は6月18日に一時、1バレル=81.67ドルと4月末以来7週間ぶりの高値を付けた。

 世界最大の原油需要国である米国がドライブシーズンに入り、「来月に向けてガソリン需要が強まっていく」との期待とともに、ロシアと中東地域の地政学リスクが再び意識されるようになっていることが主な要因だ。

 まず、世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。

 米国の直近のガソリン価格は4週ぶりに上昇したが、ガソリン需要の伸びは例年に比べて小幅にとどまっている。それでも市場では「ガソリン需要は今後拡大する」との見方が根強いが、筆者は「期待外れに終わるのではないか」と考えている。

 世界第2位の原油需要国である中国の動向も芳しくない。

 5月の原油需要量は前年比1.6%減の日量1425万バレルだった。前月に続く減少であり、年初来の累計も前年比0.3%増に過ぎない。5月の原油輸入量は前年比8.7%減の日量1106万バレルだったが、そのうち日量100万バレル以上が備蓄に回っていることも明らかになっている。

 世界の原油需要の3分の1を占める米中両国の原油需要が思わしくないにもかかわらず、原油価格が下落しないのは供給サイドの動向が関係している。