出馬表明の直後から登場した「AIゆりこ」(小池百合子氏のYouTubeより)出馬表明の直後から登場した「AIゆりこ」(小池百合子氏のYouTubeより)
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(白鳥浩:法政大学大学院 教授)

「独立国」のリーダーは誰か

 これまでの都知事選には2つのジンクスがある。第一には、都知事になるには事前に一定程度の知名度が必要であること。第二には、現職の都知事が出馬したときには落選することはなかったことである。

 第一のジンクスは、現職の小池百合子を見るまでもなく、代表的には美濃部亮吉、青島幸男、石原慎太郎、猪瀨直樹、舛添要一など、もともと高い知名度を誇っていた人物の名前が続く。

 東京都は人口が圧倒的に多い。にもかかわらず、選挙期間は限定されており、選挙区は奥多摩から島嶼部まで有する。広い選挙区に、限られた時間内で、自分の知名度を十分に浸透させるためには、それ以前にすでに一定の知名度を持っていることが必要となる。一定の知名度を持つ著名人であることは、都知事になるために必要な条件といってもよい。

 第二のジンクスに関しては、1991年の知事選にみられるように、対立候補に自民、公明など主要政党本部の推薦が出ていながら、現職の鈴木俊一氏が当選した例がある。現職は圧倒的に選挙に有利であるところがある。

 東京都は国からの補助金を必ずしも必要とせず、行政を展開できる力がある。その予算規模はスウェーデンを凌駕する。

 ある意味で「独立国」にも匹敵するといわれる東京都の行政の長として、強大な権限を持った知事は「大統領」にもなぞらえられるような強力なリーダーである。多くのメディアを通じてその姿が報じられ、都民に浸透が図られていく。そこで特に大きな失点がない場合にはそのかじ取りを変えることはなかったともいえる。

 一方で、今回の都知事選はこれらの過去のデータが効かないところがある。そうした意味では予断を許さない都知事選であるといってよい。

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