(白鳥浩:法政大学大学院 教授)
国に先駆けた政策提起をしてきた東京都
都知事選においては、重要な政策提起が行われてきた。それらは「明日の東京」を構想するものであったが、ある意味で、国にも影響を与える重要な政策となる側面もあった。
歴史をさかのぼれば、いくつかの重要な政策提起を行った事例がすぐに思い浮かぶ。
1995年に当選した青島幸男氏は、国政が「自社さ」連立内閣であった村山富市政権下の都知事選で、「世界都市博覧会中止」をうったえて選挙に臨んだ。折からの無党派層の風をつかみ、青島氏が46万票の差で当選し、都市博は中止となったのであった。
さらに、1999年都知事選で、小渕恵三政権下の都知事選では、与党自民党は森喜朗幹事長が候補者選びを行い、公明との連立を見据え、明石康氏を推薦。他にも舛添要一氏、民主党推薦の鳩山邦夫氏、石原慎太郎氏が出馬表明を行った選挙であるが、その中で当選した石原氏の政策は記憶に強く残るものであった。
石原氏はその長い都知事の在任期間の中で、強いリーダー像を示そうとしていた。その石原氏の政策としては、2002年の「NOxディーゼル車排ガス規制」、2012年「尖閣国有化問題」など、物議をかもすものはあったものの、都が国に先駆けて政策のイニシアチブをとったというところがあった。
現在の小池氏も、2016年の「築地から豊洲への移転」、2020年の「コロナ対策」、そして2021年の「東京オリンピック開催」など、多くの政策課題に挑戦し、一定の政策評価を得てきた。
そして政策的に継続中であるのは、選挙年である2024年から始まった①「018サポート」や、②「高校授業料の実質無償化」などに代表される、都独自の「子育て対策」、「少子化対策」であるといってよい。
すでにみたように都知事が国に先駆けて政策を行い、国に注文を付けることが出来る実例もあった。小池氏はそうした都政の前例を「子育て対策」において踏襲しているといってよい。
さて、こうした歴史を踏まえると18日午前10時から、東京都庁第一本庁舎からリモート会見で発表した小池都知事の「東京大改革3.0」はどうであったであろうか。
※告示直前解説:「AIゆりこ」が示す“抜かりなき”小池百合子の都知事選3選戦略…「空中戦」と「地上戦」、小池・蓮舫の戦術を分析はこちらから