「都政継続vs政権交代」「劇場型vs突破型」「バラマキvs事業仕分け」

 こうしてみてくると、この東京都知事選の主要2候補である小池氏と蓮舫氏という二人の、この選挙にかけるスタンスは対照的であることがわかる。

 第一に、選挙の位置づけが異なる。小池氏はこれまで2期の「都政継続」の是非を問い、蓮舫氏は来る衆院選を意識した国政の「政権交代」の前哨戦と位置づける。

 第二の対立軸は、二人の政治家としてのスタイルである。小池氏は典型的な「劇場型政治家」といってよく、舞台のセリフのように、よく練られたキーワードを駆使し、周りの人間や環境を巻き込みながら、自分に有利な「劇場空間」を創出することに長けている。

 有権者はいつのまにか、そうした「小池劇場」の観客になっていることとなる。

 これに対して蓮舫氏は、強力な「突破型政治家」といってよい。

 感覚的に発する短い言葉で、相手の本質を突き、個人として真正面から正攻法で「一点突破」をしかけていく。そうした、一瞬の瞬発力と、破壊力はすさまじいものがあり、時の総理をも苦しめてきた。

 今回、そうした二人のスタイルの違いが、リモートによる政策発表という「劇場空間」を用いた小池氏と、小池氏の政策を批判し、自らの政策が「本物」と言い切り、攻撃する蓮舫氏の、両者の姿勢の違いに表れている。

 第三の対立軸は、現職の知事であるか、新人の挑戦者であるかの違いにもよる。

 現職の知事である小池氏であれば、その潤沢な都の財政を背景として、ある種「バラマキ」とも捉えられる政策をとることができる。「子育て対策」にまつわる様々な出費や、プロジェクションマッピング事業などがその典型と考えられる。

 新人の挑戦者である蓮舫氏とすれば、これまでの自らの国政での成果である「事業仕分け」を都政においても行い、無駄な行政の出費に対して厳しくチェックを行うということで、現職の知事を攻撃するということは有効な戦略となる。

 こうしてみると、二人は背景とする組織も、政治家個人としてのスタイルも、これまでの政策実績や目指すべき理想の東京像も大きく異なるところがあることがわかる。

 選挙戦の中で、こうした二人だけではなく、他の候補者もどのようにその選挙の帰趨に絡んでくるのか。単に都政にとどまらない選挙であるだけに、都民のみならず、国民全体の関心事を集めながら、選挙の開始の号砲を待っている、現在はそうした状態であるといえる。

 都民の選択を全国が注視している。

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