蓮舫氏公約にみる、東京都版「事業仕分け」への意欲

 それに対して蓮舫氏は、小池氏の政策発表の数時間後、同日の6月18日の14時に公約を発表した。

 蓮舫氏は自らの政策を「7つの約束」としている。これは小池氏が2016年都知事選に初当選した際に訴えていた「待機児童」「満員電車」「残業」「ペットの殺処分」「介護離職」「都道の電柱」「多摩格差」の7項目についての「7つのゼロ」を、蓮舫氏が出馬会見の時に、強力に批判したことを意識したものといえる。

 ここにも「空中戦」としての小池氏のメディア戦略に対する、蓮舫氏のメディア戦略という側面が見える。

 蓮舫氏の「7つの約束」とは「あなたと次の東京へ。」というキャッチフレーズのもと、現在の小池氏の政策を批判したものである。

「7つの約束」とは、(1)「現役世代の手取りを増やす~本物の少子化対策」、(2)「あなたの安心大作戦~頼れる保育・教育・介護・医療へ」、(3)「もっと多様で生きやすく~あなたの人生の選択を大切にする」、(4)「本物の行財政改革~徹底見直しで、ガラス張りの都政に」、(5)「本物の東京大改革~古い政治から、新しい政治へ」、(6)「東京全体をもっと良くする~未来への責任/住みよい多摩へ」、(7)「良い政策は発展させる~行政の継続性も大切に」というものである。

「本物の」と書くことによって、小池氏が政策の実績の中心としている「少子化対策」や「子育て対策」を真っ向から批判している。

 そして何よりも白眉であるのは、第4の「本物の行財政改革~徹底見直しで、ガラス張りの都政に」だ。「事業仕分け」で名をはせた蓮舫氏ならではの、小池氏に対する「一点突破」の批判である。

目を見開いて追及する蓮舫氏。民主党政権時代の事業仕分けでは強烈な印象を残した=2010年5月20日(写真:アフロ)目を見開いて追及する蓮舫氏。民主党政権時代の事業仕分けでは強烈な印象を残した=2010年5月20日(写真:アフロ)
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 つまり、小池氏は都政の「ブラックボックス」の情報公開を行うといっていたわりには、政策決定のプロセスが少人数による「トップダウンの政治」となってしまっていることを批判し、小池氏の新たな「ブラックボックス」を情報公開するということを「ガラス張りの都政」という言葉で表現し、「ボトムアップの政治」を目指すことを公にしている。

 さらに本物の行財政改革のために「東京版・行政事業レビュー」を導入することを提案するなど、東京都版の「事業仕分け」を行うことを示唆している。ここにはプロジェクションマッピング事業や、神宮の森の再開発も当然視野に入ってくる。

 また、子育て中の貧困家庭の家賃補助制度などによる支援拡充、非正規労働者の処遇改善などに取り組む具体策は、「労働者の政党」である立憲民主党や共産党の政策を意識したものともなっている。

 しかし、共産党が前面に立ってしまったために、連合や国民民主党は蓮舫氏支持とはならなくなってしまったというジレンマもある。