羽毛恐竜の研究史上で意味ある発見
まず紹介するのはカウディプテリクス・ゾウイ(Caudipteryx zoui:鄒氏尾羽龍)だ。約1億2460万年前の白亜紀前期に生息したオヴィラプトルの古い仲間で、発見地は遼寧省北票市。羽毛恐竜や鳥類・水辺の小動物などの化石が数多く見つかる熱河層群で発見された恐竜である。
カウディプテリクスの体長は70〜90センチ程度で、大型のオスのニワトリよりもひとまわり大きいくらいの生き物だった。前足と尾の先に羽軸のある発達した羽毛を持っていたが、飛行はできず、羽毛は保温のためだったとみられている。尾の羽は扇形に広がっており、生前の外見はかなり鳥に似ていたようだ。
白亜紀後期のオヴィラプトルの仲間たちとは違い、カウディプテリクスの口はまだ完全にクチバシ化しておらず、化石からは上顎にある少数の鋭い歯が確認された。後に胃石を持つ化石も見つかっており、肉だけではなく植物も食べる雑食性の生き物だったと考えられている。
遼寧省北票市でカウディプテリクスが発見されたのは1997年で、まだ羽毛恐竜の存在が化石によって裏付けられきっていなかった時代だ。付近の地層からは2年前の1995年に、有名なシノサウロプテリクスが見つかっていたが、この時点ではまだ恐竜ではなく鳥類だと考えられていた。
そもそも、羽毛の痕跡を残したシノサウロプテリクスの化石が、鳥類の化石や「ニセ化石」ではないれっきとした恐竜の化石であると判断されたのは、同じ熱河層群からカウディプテリクスやプロターケオプテリクスなどの他の羽毛恐竜が続々と発見されたためである。
カウディプテリクスは、すくなくとも一般社会では比較的知名度が低い恐竜なのだが、シノサウロプテリクスという近年の中国恐竜学の代表選手が認められるきっかけを作った。羽毛恐竜の研究史上では非常に意味のある引き立て役を演じたと言っていい。