大手コンサルティング企業で発見された「不都合な事実」

 その研究を行ったのは、大手コンサルティング企業の一画を占める、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)だ。

 BCGと言えば、これまでも生成AIについて実践的な取り組みを行っていることを紹介してきた(関連記事:BCGのコンサル758人が被験者、ChatGPTが生産性を上げたタスク、下げたタスク)。彼らはそうした取り組みを通じて得られた知見を社外にも共有してくれているのだが、今回発表されたのも、新たに発見された興味深い情報となる。

 公開された論文によれば、研究者ら(BCG社員とハーバード・ビジネススクール、MITスローン・スクールなど世界トップクラスのビジネススクールの研究者たち8名)は、BCGの若手コンサルタント78名に対して、2023年7月〜8月にインタビューを実施した。

 対象となったコンサルタントたちは、ビジネス上の問題を解決するタスクのために生成AI(GPT-4)を活用するという実地実験に参加した人々で、タスク完了後すぐに、オンライン面談が行われた。

 その結果、彼らが下した結論は、「生成AIをテーマにリバースメンタリングするのはリスクが大きい」というものだった。

【関連記事】
Don't Expect Juniors to Teach Senior Professionals to Use Generative AI: Emerging Technology Risks and Novice AI Risk Mitigation Tactics(Harvard Business School)

 彼らはリバースメンタリングそのものの価値を否定しているわけではない。

 シニア社員たちは複雑な問題を扱うことが多く、新技術に関する知識を習得するのに長い時間を割くわけにいかない。一方で若手社員は仕事の最前線におり、新技術に触れ、それに関する知識を実践から習得するチャンスが豊富にある。したがって彼らに学ぼうというのは、シニア社員にとって正しい姿勢であることが多い。

 しかし生成AIのように、テクノロジー自体が急速に進化しており、その活用方法も日々変化しているような状況では、何がベストプラクティスであるかを見極めるのは難しい。BCGのような大手コンサルティング企業ですら、自らを実験場として正解を模索しているほどだ。

 コンサルタントとしてトレーニングを受けているわけでもない、またテクノロジーの専門家というわけでもない一般企業の若手社員に、シニア社員に正解を教えてくれるよう期待するのは酷というものだろう。