――チェコの電源構成についてお聞きします。2020年のデータでは石炭発電40%、原子力発電40%となっていますが、将来的にどう変わっていくのでしょうか。

 原子力と石炭がそれぞれ40%ずつ、残りは15%が再生可能エネルギーで、水力がだいたい5%です。発電に占める天然ガスはごくわずかで、現状はほとんどが原子力と石炭といえますが、石炭は段階的に、おそらくはこの10年で廃止され、他のものに置き換えることになります。

――石炭は天然ガスによって置き換えるのですか。

 原子力発電所の新設には少なくとも10年、あるいは15年かかります。ですから、早く代替したいのであれば、天然ガスにする必要があります。あるいは、近隣諸国から電力を輸入することもできるでしょう。

原子炉の新設計画からロシアと中国を排除

――チェコでは国内のドゥコヴァニ原発とテメリーン原発に新たにそれぞれ2基、計4基の原子炉を建設する計画があります。日本では原子力発電の是非をめぐって世論が大きく分かれていますが、チェコの世論についてお聞かせください。

 原子力発電については国民の70%程度が支持しています。この数値は、数十年前からずっと変わっていません。ですから、原子力発電の是非について議論することなく、政府は新しい発電所の建設を考えることができます。すでに昨年10月に1基目の入札を終えていますが、現在はフランスと韓国の2社に4基分の追加入札を依頼しています。

 もちろん、チェコは民主主義国家ですから、どんな問題についても常に論争はあります。ですが原子力に対しては国民の支持があり、国会内にも原発に反対する政党はありません。

――チェコの新しい原子炉建設にはフランスと韓国の企業が入札に参加していますが、当初は中国の企業も興味を示していたと聞いています。

 私たちは2021年にロシアと中国の原子力発電の入札を禁止する法律を成立させました。政府は2017年、6人の有識者に、どの国を原子炉建設に入札させるべきか諮問しました。私はその6人のうちの1人で、私たちは最終的に、ロシアと中国は参加させるべきではないという報告書を書きました。内部で大きな議論があり、結論が出るまでに数年かかった。そして2021年、ロシアと中国の原子力事業への参加を禁止する法律が成立したのです。

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