世界は禁煙に向かっている(写真:Nopphon_1987/Shutterstock)

5月31日から6月6日までは全国一斉の禁煙週間です。健康志向の高まりなどを受け、喫煙可能な公共空間はどんどん狭くなってきました。しかし、外国に行くと、レストランやカフェ、街頭などで喫煙する人を見かけることも少なくありません。世界の喫煙事情はいま、どうなっているのでしょうか。禁煙週間を機に、やさしく解説します。

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「毎年200万人以上がタバコ被害で早死に」

 禁煙週間の初日、5月31日は世界保健機関(WHO)の定めによる「世界禁煙デー」です。

 WHOは1970年の第23回総会で初めてタバコ問題を決議し、喫煙習慣の抑制や若年者が喫煙しないような教育の推進などを求めました。5月31日を「世界禁煙デー」とすることが決議されたのは、それから約20年が過ぎた1989年の第40回総会です。決議では、「毎年200万人以上がタバコ被害で早死に」「先進国では減少しているタバコ消費量が開発途上国では顕著に増加」などと指摘しました。

 なかでも注目されるのは、タバコ生産と開発途上国の人々の関係です。第40回大会の決議は、タバコ生産に依存している開発途上国の経済を変えない限り、国際社会全体での喫煙量は減らないだろうとの視点を打ち出しています。

 そのうえで、タバコ生産に代わる収入源を確保するために作物代替のプログラムをつくり、タバコ生産に依存している経済を転換させ、食糧増産を図ることが国際社会に有効なのだと強調しました。

 WHOは加盟各国に具体的な施策を推進するように求めたほか、世界禁煙デーを定めて啓発活動に力を入れていくことにしたのです。

 ただ、禁煙に向けたこうした動きは一直線に進んだわけではありません。1970年代から90年代にかけ、規制を求める人々とタバコ会社は激しいバトルを続けました。とくに、フィリップ・モリス社など有力タバコ会社が多数存在していた米国では、健康被害とタバコの因果関係に関する被害者の集団訴訟に対し、タバコ会社側が猛烈な切り崩しを図ったり、議員へのロビー活動を強化したりしました。

 そうした状況は、アル・パチーノ主演の映画『インサイダー』(1999年、米国)でも余すところなく描かれています。

 ニコチンが人体に有害であるという詳細データを隠し続けるタバコ会社の副社長が良心に耐えかね、密かに米テレビ3大ネットワークの1つ、CBSに接触。CBSの報道スタッフは副社長の内部告発をスクープしようとしますが、事情を察知したタバコ会社はテレビ局上層部に圧力を掛け、番組をゆがめてしまうという実話に基づく名作です。

 では、健康とタバコをめぐる現在の状況はどうなっているのでしょうか。