いい人になっても正直者が馬鹿を見るだけ

 子どもの学力を上げるためにあの手この手を使って読書をさせるトピックで、「昔ばなしを読み聞かせても将来の役に立たない。親切でいい人になることを奨励したとしても正直者が馬鹿を見るだけだ」という意見にたくさんの親が賛同していた。

 韓国の昔ばなしは、テーマとして親孝行を善としたものが多い。代表的な作品に「沈清」がある。日本のかぐや姫のように、知らない韓国人はいない。一昔前は幼稚園児が発表会でよく披露していたものだ。

 主人公は貧しい家で生まれ育ち、父親は盲目だった。米300石を仏に供えれば治るという話を信じて、守れもしない約束をした父の代わりに、中国船に自らの身を売り、海を鎮める供え物として身を投げる悲しい話だ。

 こんな話を読み聞かせたところで、厳しい競争社会を勝ち抜いて、有名大学に入るためには何の役にも立たないという親たちの判断である。

 一昔前までは「親孝行」であることが絶対的な正義であった韓国人の思考回路が、大きく変わった瞬間であった。

 筆者が12年前に買い揃えた60巻セットの韓国の昔ばなしは、3年前に38巻セットに大幅に改定された。時代と共に取捨選択されていくのであろう。

 少子化と共に児童書にもデジタル化が進み、危機にさらされている教育図書業界も必死になっている。

 直近のトレンドは「偉人伝」である。